心不全とは
『心臓が悪いため、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』と日本循環器学会と日本心臓病学会で定義されました。
日本の循環器疾患の死亡数は、がんに次いで第2位となっており、心不全による5年生存率は50％と予後についても決して良くありません。しかし、その事実と心不全の怖さ（例えば完治しないなど）についてはあまり知られていないのが現状です。
原因としては、血圧が高くなる（高血圧）、心臓の筋肉自体が悪くなる（心筋症）、心臓を養っている血管の病気（心筋梗塞）、心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁があるが、その弁が狭くなったり、 きっちり閉まらなくなったりする病気（弁膜症）、脈が乱れる病気 （不整脈） が挙げられます。
心不全の初期によく見られる症状が、運動時の息切れや、両足、特に下腿の前面や足首、足の甲を指で押さえると、くぼみができるような『むくみ』です。むくみは両方の足に出現することが特徴です。その他には咳、動悸、横になったときの呼吸困難、疲れやすいなどです。
急性と慢性
急性心不全は、それまで悪くなかった心臓、あるいは悪いと全く気づいていなかった心臓が急に悪くなった状態を言います。激しい息苦しさで発症することが多く、適切に治療しないと生命を落とすことがあります。急性期を乗り切ると、その後は慢性心不全になります。
検査について
診断をつけるために行われる検査は、胸部X線撮影、血液検査（BNPなど）、心エコー検査、心電図などです。必要であれば、心臓カテーテル検査や心臓MRIも行います。
当院では院内でBNP測定（15分程度）や心エコー検査ができる体制が整っています。
治療について
心不全の治療には2本立てで行います。一つは、体内の余分な水分を出す薬を用いて循環を整える治療で、もう一つは原因である心臓病に対する治療です。
体内の余分な水分を出す薬を用いて循環を整える治療は、主に利尿薬と血管拡張薬を用います。利尿薬とは余分な水分を尿として体外に排出するために用います。余分な水分を身体の外に出すことが目的ですので水分や塩分は控えた方がよいのですが、心臓や腎臓の状態を加味して個別に詳しくご説明いたします。 血管拡張薬は、血管を広げることで心臓の負担を軽くするために使います。心不全で利尿薬を内服している場合は、原因の心臓病が改善していない状態で利尿薬を中止すると心不全症状が悪化しやすいため自己判断での内服薬調整は避けなければいけません。
原因である心臓病の治療は、まず心臓病の原因を調べることから始まります。心エコー検査は心臓の働きや弁膜症の有無などを調べるのに非常に有用です。お薬での治療が中心となりますが、原因によって治療法が異なるため個別に説明いたします。
心不全と「付き合っていく」ということ
心不全を発症しても、適切な治療によって一旦は症状が改善します。しかし残念ながら、心不全そのものが完全に治ることはなく、症状が再燃することが少なくありません。また、過労、塩分や水分の摂りすぎ、風邪、ストレスや、薬の飲み忘れなどにより心不全の症状が悪化、あるいは再発することもあります。そして、安静、治療の適切化によって、心不全の症状は再度改善します。このように心不全は、悪化と改善を繰り返しながら“だんだん悪くなる”（進行する）病気ですので、具合が悪くなってから治療するのではなく、症状がない状態でも悪くならないよう予防を心がけることが大切です。
心不全は完治するというよりは薬で症状を安定させる治療が中心となります。そのため心不全を生じた方の多くは、その後長期間に渡り心不全と付き合って行く必要があります。
心不全は、安定していれば運動や仕事も十分に可能です。もちろん、そのためには定期的な通院が必要です。内服薬の調整や生活指導（水分・塩分制限、禁煙、規則的な生活など）は循環器専門医が個別に対応させていただきます。